僕の実家は、祖父が財田の工業団地に、高齢者ばかりを集めた木工工場を持っていて、普段は建具の修理や、オーダーメイドの家具を作ったりしている。元々は県下でも有数の家具メーカーを経営していたのだけど、そっちは代を譲ってそこを引退した職人を引き連れて別の工場を開いたのだ。元々の工場は、引き継いだ僕の叔父さんが経営者になってから、輸入家具に中心をシフトして半分傾きかけていたのを何とか立て直したのだけど、その時に半分方閉めてしまった。そこでリストラされた職人達を纏めて、子会社、という形で移転したのだ。もっとも、叔父さん曰く、高齢者を雇用するといくらかの補助金が出るので、その為に運営しているようなモノ、らしい。

僕は小さい頃から、祖父に連れられて工場に顔を出していた。夏休みはよく手伝いに駆り出されたり、時々は自分で図面代わりの絵を描いて、それを木材から木取りして機械で切ったり、組み上げたりさせてもらった。半分僕の遊び場のような感じで、工場自体も職人達が好きでやっている雰囲気の中にあった。

額自体を自分で作ろうと思ったのも、息抜きの延長だったけれど、受験だろ?と訝しがる祖父を前にしてはそうも凝ったモノは出来ずに、結局土曜日一日で簡単なモノを用意しただけだった。本当はハンドルーターとか遣って彫刻を入れたかったのだけど、美術室ほど周囲の目は緩くなかった。本当は逆なんだろうな、と僕は思いながらも寸法を書いたメモを元に、木を削って塗装まで施した。

キャンバスの四隅にくっつけるような形で、額を誂えるのにそれほどの時間はかからなかった。イーゼルに載せてしばらく眺めていると、一応の満足感に、溜飲が下がる、というフレーズを思い出して苦笑した。

 

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