東京で、と再び、妹が身を乗り出してきた。ルームミラーに、何かたくらんでいるような、下世話な笑顔が映る。

「あのひょろ長い彼氏と一緒に住むのか?」

ひょろ長い彼氏とは、そのままトモ君の印象だった。

「一緒はないです。まだ何処に住むかなんて、全然決めてないし。別に住む所は了みたいな所でもいいんですよ、ギターさえ弾ければ」

「そうか、あのひょろ長い彼氏には、もれなくニュースキャスターの姑が着いてきます、だもんな」

あ、そういえば、と妹は急に声色を変えた。

「サインもらうの忘れたな、握手してもらっただけだ」

あの雰囲気で、サインを強請れる方がどうかしていると思ったけれど、意外に妹は、そういう所をブレイクスルーする厚顔さを、今は持っているかもしれない。妹はラフに代わってゆくに連れて、生きてゆく強さ、みたいなモノを手に入れた気がする。肝が据わったというか、何物にも動じないような所を、時々見せた。

写メもなぁ、と言いながら、また妹は寝転がった。

 

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