やっと、バンドから解放されて、妹が戻ってきた。手には何も持っていない。 「買いそびれた」 悔しそうに妹は言う。 「後で自動販売機で買ってやるよ」 買ってやる?と妹は聞き返した。 「珍しいな、兄ちゃんがおごるって?」 訝しがる目をして、妹は僕をじろじろ見た。 「明日菜ちゃんのついでだよ」 僕はそう言って、視線を逸らした。すると、横から明日菜ちゃんが、私炭酸苦手なんで、と言った。さっきまで妹を話題にしていたのに、その変わり身の早さは、彼女の強かさの現れなんだろうな、と思った。ただ、それは必要な強かさには違いないけれど。 そうしていつしか、また二人は連れだって歩き出した。僕は半歩遅れて、二人の後を歩き出した。 雑踏は、もう帰り支度になだれ込んでいて、アーケードの外へと溢れだしていた。花火大会の前よりもずっと速いペースで、流れは進む。人混みの向こうに、丸亀城が見えていた。アーケードのまっすぐ正面に、ライトアップされた天守が見えていた。 あそこまで行くと、今日一日が終わるんだな、とそんな風に思った。
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