後ろから見ていると、妹は明日菜ちゃんの手を握った反対側の手を、意識的に丁寧に扱っているのがわかる。その手には、金魚すくいで手に入れたビニール袋を提げてあって、中では金魚が二匹、まだ元気に泳いでいる。それを激しく揺すらないように、片方の手だけはほんの僅かに持ち上げ留めて、静かにしているのだ。

あれをどうするつもりだろうか、と僕は気になった。金魚鉢とか、そういう気の利いたものがウチにあったかどうか、すぐには思い出せなかった。

「金魚、持ってやるよ」

僕は二人に近づき、声をかけた。アリガト、と妹は言って、僕にビニール袋を渡した。

「これ、飼うのか?」

「当たり前だろ?喰うのか?」

妹はまじめな顔をしてそう返した。金魚鉢とかあったっけ?と問うと、何とかなるんじゃない?とあまり深くは考えていない。

「瓶詰め金魚」

コーヒーの空き瓶に水を入れて、金魚を飼ったことがある、と明日菜ちゃんが入った。大丈夫?と僕と妹は二人して訝しがると、三日で死んだ、とあっけなく言った。

「ああ、そういえば、じいちゃんちに瓶じゃないけど、でっかい壺にナマズを飼っていたな。覚えてる?」

妹は、ああ、と思いだして目を細めた。明日菜ちゃんが、なになに?と顔を突っ込む。もう。花火の前の難しい顔は、微塵も見せなくなった。まるで何かから解放されたように、晴れ晴れとした笑顔だ。

「あれはソウギョとかいう奴じゃなかったか?詳しくは知らないけど」

俺たち、ちっちゃかったものな、と僕は言う。

 

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