初めて明日菜ちゃんと会う前に、彼女を紹介してくれたユキちゃんが、僕にこんなことを言った。

「女子高生と知り合いになるなんて、もう滅多なコトじゃなくなったんだから、これからどうなるかは別にして、とりあえず手でも握っときなさいよ」

僕は苦笑して応えたけれど、そういえば、僕は明日菜ちゃんの指に幾度となく触れたことはあっても、ちゃんと手を握ったりしたことはない。何かの拍子に、手を取るような感じで手と手を重ねたことはあるかもしれないけれど、ちゃんと手を繋いだことはない。

そういう機会がなかったから以外の理由は何もないのだけど、ユキちゃんの一言を僕が意識したせいもちょっとある。そして、今はそれがなんだか、とてももったいないことをしているような気がしてきて、逆に余計に意識してしまう。

今もし、彼女と手を繋いだら、本当に僕は、トモくんから彼女を横取りしてしまったことになる気がする。

そんなふうに考えを巡らせている僕の目の前で、妹と明日菜ちゃんは、ずっと手を握っている。手を繋いで横断歩道を渡り、今は細い路地を、繋いだ手を大きく振りながら、歩いている。二人が並ぶと、ちょうど同じくらいの背の高さで、妹の方が少しだけ高い。ちゃんと計ったことはないけれど、僕と妹でも、妹の方が少し高いかもしれない。二人とも、制服で道の真ん中を堂々と歩いている。

 

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