丸亀の駅は高架になっていて、線路の真下に改札がある。そこを通り抜ければ、駅前の広場に出て、地下には駐車場があるし、アーケードにも近い。しかし、僕らは少し遠回りして、入り口を通りすぎ、一つ向こうの歩道を歩いて高架をくぐった。

そこは、ちょうど美術館の前の道で、改札とはそれほど離れてはいないけれど、街灯が少なくて、夜が更けるとほんの少し、闇に紛れてしまう。外の照明も落ちた美術館を抜けると、道幅が急に広くなって、空が開けて、暗さがそれほど気にならなくなる。月夜の晩などは、真夜中でも灯りの消えたアーケードよりもずっと明るい。

今晩は月が出ていないせいか、満遍なく街が暗いような気もするけれど、それは普段よりも、夜の間に明るい場所を通ってきたせいかもしれない。祭りが終わって、徐々に街の灯が落ちてゆく。花火が終わると、宵闇は急激に街に広がった気がする。

まだ祭りは明日もあるのに、眠りにつくと、この街はいつもの街になる。

そのほのかな寂しさを受け入れ難い人たちは、三々五々、南に向かって歩いていた。そういう人のほとんどは、アーケードの方に向かって歩き、まだ残っている祭りの面影に触れたり、もう少し入ってアーケードを抜けて、僅かなネオンの下に消えるつもりなのだろう。

人の流れを切り裂くように、車のクラクションが鳴る。駅の地下には市営の駐車場があって、その出口がちょうど美術館の前の信号と繋がっている。今はまさに、そこから次から次へと車が吐き出されている。同じように歩行者の波もそこに重なって、混沌としている。

僕らはそこをまっすぐ突き抜けて、一度広い歩道を歩いて、裏側からアーケードに戻った。同じ様なルートを辿る人も、当然多くて、何処を歩いても同じ様なものだった。

ただ、帰り道は駐車場までの距離が倍ほどにも感じる。お楽しみの後の、余韻は、あまり心地の良いものではなかった。

それにしても、僕はそれほど花火を楽しみにしていたのだろうか?きっと、明日菜ちゃんがいなくて、おまけに妹が行こうぜ、と言わなければ、わざわざココまで出向くことはなかっただろう。もっとも、明日菜ちゃんが今日、ウチに練習に来ることはわかっていたし、数日前の新聞に広告が入っていて、それをさらっと見通した時に、なんとなく二人で寄り道するかもな、ぐらいは想像したけれど。

それでも、やはり女の子と連れだって外を歩くのは、悪い気はしない。その片方が、妹、というハンデを除けば、女子高生とデートなんだな、と帰り道になって考えた。

 

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