不覚にも、僕はきっとモテたいと思って、その第一の武器にギターを選んだはずだった。そしてその武器を手に入れ、手足のように酷使できるように寝食を共にして、そしてたどり着いた場所は、性別も恋愛感情も越えた所で繋がる場所だった。

それに気付いた時に、僕は自分自身に失笑した。けれども、それを笑い飛ばしてあまりあるほどに、僕はその場所に惹かれていた。もう逃げ出せない、と覚悟を決めて、それを微塵も後悔していなかった。

きっと僕の欲望の全ては、ストラップで肩に引っかけたその聖地に触れた途端、全て浄化されてしまうのだろう。

僕は自分の欲望を全く否定はしないけれど、やはり孤高の場所は、それをも越えないと納得は出来ない。その片鱗を、僕はきっと見てしまったのだ。

そして、その在処を、明日菜ちゃんもどこかでもう意識していて、だから、その強さと、あっけないほどに取捨選択できる能力を身につけているはずだ。もっとも、明日菜ちゃんのギターの腕は、もう遙かに僕を凌駕している。そういう意味で言えば、僕などが意識の中で持っている言い訳などは必要ないのだろう。

僕が聖地と強く意識しないと、わからない場所を、明日菜ちゃんはきっと、軽々と飛び越えて、その向こうの頂にたどり着こうとしているはずだ。

その場所では、もしかすると、逆に僕が裸にされて、彼女と繋がっているかもしれない。欲望がちゃんと欲望として成り立つ、新しい形を持った世界なんじゃないか、と僕はなんとなく思っている。

あくまでも、僕は感覚で、だけど確信に近い信憑性を持って、その世界を感じている。

ああ、性別を飛び越えた、その向こうの場所なら、もしかすると、実際に妹に嫁入りすることも可能かもしれないな。僕は腕を組んで、はしゃぎながら並んで歩く制服姿の二人の背中を見ながら、そんなことを考えた。

結局、いずれにせよ、二人がどうしようもない僕の面倒見てくれるなら、それでイイ、という結論に達した。ならば、法律や常識を飛び越えても、僕は二人を何処までも支持するのにな、なんて考えていた。

その辺が僕の、限界なんだな、きっと。

 

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