「今考えると、よくオヤジが許してくれたよな、と思うんだけど」

ちゃんと説明した記憶もない。将来の話はなんとなくしたけれど、僕は今はまだわからないよ、と言って少し考える時間が欲しい、ぐらいで終わらせた。何か角突き合わせて説得したとか、家族会議とか、そういうモノは一切無かった。

「許されたワケじゃなかったんじゃないの?どっちも返事しなかっただけで」

喧嘩してたんですか?と明日菜ちゃんが訊く。それには僕も妹も首を振る。

「しょっちゅう話すって方でもなかったけど、仲が悪いというつもりはなかったよ。オヤジはどうかわからないけど」

ああ、それはねぇ、と何か意味深な声を妹が上げた。

漠然と歩いている内に、目の前が開け、港を跨ぐ浜街道の橋が見えた。周囲の街の明かりが残っていて、橋の上のライトも眩しく光っている。空に花火が上がり、そのずっと向こうにゴールドタワーは緑色に光っているし、更に向こうの瀬戸大橋はライトアップされている。道路上では、交通整理のパトカーの赤色灯が、所々で光っていた。カラフルな色の明滅に包まれて、少なくとも、今日の夜に、節電は関係なさそうだった。

橋の手前にもダンス・パフォーマンスの会場があったけれど、今はメインが花火になっていて、みな空を見上げている。実際一番のビューポイントは、浜街道の向こう、ファミリーマートを越えた突き当たりの辺りらしかったけれど、もう人がいっぱいで、車も路上駐車が連なっていた。

そういう喧噪とは関係なく、花火は絶え間なく上がり続けていて、充分に大きな姿で見えた。鮮やかな色を放って広がる姿は、僕らの会話とも関係なく、きらめきを四方に放って華やいでいた。

 

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