人の波がさっきよりは確実に増えてきて、商店街が人で埋まるほどではないにせよ、流れはノロノロと、それでも北へと動いていた。今度は妹が露払いのように前を歩き、やっぱり僕と明日菜ちゃんは並んで歩いた。時々人に押されてその輪が崩れそうになると、僕の前、妹の後ろに明日菜ちゃんはスッと入ってきた。

どうやら人が多くなったのは、ダンス・パフォーマンスが終わったせいらしかった。おそろいの派手な衣装の団体と、時々すれ違ったりする。今日の祭りの予定は、後は花火大会で終わりのはずだ。帰宅するのも、花火を見に行くのも、方向は一緒だった。

丸亀にアーケードは二つあって、それを繋ぐ細い道が、何本かあった。今歩いている所から覗く、もう一つの通りも同じくらいの人が歩いている。あっちは通町よりずっと狭いので、よけいに人が多く見える。

それが浜町の通りで繋がって、そこは広い車道になっていて、やはりアーケードがあった。それを西に抜けると丸亀の駅がある。東に向かうと、すぐに南北に抜ける通りにぶつかる。それを北に曲がると浜街道に出て、花火大会の会場に連なる。人並みは、自然、東の方へと続いている。色とりどりの浴衣が、目立ってそっちへ向かっている。

僕らはそれとは逆の駅の方へ向かう。列から離れると、急に道が広々と感じられた。アーケードが切れた、地下駐車場の入り口の辺りまで来ると、空が開けてずいぶんと解放されたような気分になった。夜空はもう、すっかり闇に落ちていたが、星は見えなかった。駅の正面はコンクリートの敷石が並んだ広場のようになっていて、そこを囲むように道が連なっている。その道路にまた細い路地がいくつも顔を出して、ちょっとした迷路のようになっている。

その広場の道路を挟んだ隣には、美術館の建物が見えた。入り口の前には地元出身の現代美術家のオブジェが並んでいて、ライトアップされていた。高架の駅と、美術館の建物はちょうど同じくらいの高さで、さながら壁のように連なっている。でも、隙間を埋めるような細道や、そのオブジェの空間がある御陰で、圧迫感のようなものは感じない。逆に広々とした感覚さえ感じるのが不思議だ。

 

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