「今でも、ちゃんと付き合っているんだろ?」

モグモグさせながら、明日菜ちゃんは頷く。この休憩所の隅には、お茶のサービスがあって、きっと商店街のおばさん達だろう、通町、というネームの入った法被を着た集団が、駐車場の片隅で、お茶を配ったり、祭り特製のうちわを配ったりしていた。明日菜ちゃんはそこでもらったお茶を一口啜る。

「別に嫌いになったワケじゃないし、本当はトモ個人、って云うわけでもないんだけど、なんて言うのか、ズレちゃっている感覚を最近、よく観じるようになっちゃって」

明日菜ちゃんのパックは、半分ほどが平らげられている。間を空けながら、今日は明日菜ちゃんがものを食べる所ばかり見ているな、と思う。セッション以外で、彼女とこんなに一緒にいるのも珍しい。

「きっと私の方がズレているんだと思うんですよ。モンバスも、本当はバンドで行こうぜ、っていう話になってて誘われていたんだけど、誘われた途端に、冷めちゃったというか。あまのじゃくなのかな、って、練習しようよ、って思っちゃった」

思っちゃった、の「た」に合わせてブスリと、新しいたこ焼きにつまようじを刺して、そのまま指先で弄んだ。

「トモも、夏休みに入る前に、急に家族家族って、騒がしくなって。トモ自身も困惑していたんだと思うんだけど、急にお母さんが一緒に暮らそう、みたいな話をしてきて、これまでの生活にも何不自由無くって、別に全く逢ってなかったわけでもないし、それがなんだか本当に急な話で。それで、そういう話を、私に相談するんだけど、きっと他には、話せる相手がいないというか、まず私に相談して、みたいなことを考えているのかもしれないけど、困っていることに答えを出せるほど、私には、こんな風に言っちゃうと冷たいようだけど、関係ないというか、他人事というか」

はぁ、と明日菜ちゃんはため息をつく。指先に触れたつまようじを、円を描くように揺らせて、たこ焼きをかき回す。粘ついたソースが照明を跳ねて、鈍く光る。

「たぶん、今日だって、そういう集まりなんじゃないかなって。盆前に例のお母さんがこっちに帰ってきてからずっといて、ジャーナリストだっていうお父さんも一緒にいて、ほとんど缶詰っていうか、そっちにかかりっきりで、まぁ、それは私もいろいろと動き回れるからいいんですけど、そういう所で話していることに、いつの間にか私も組み込まれているっていうのか、なんだか話題に出てきて、知らないウチに関わっちゃっているんですよね」

付き合っているだけなのに、と言ってからやっと、彼女は、たこ焼きを口に入れた。もう半分冷めていたたこ焼きを、明日菜ちゃんは思いきり噛む。薄くリップを引いた厚ぼったい唇に、ソースが僅かに滲む。

 

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