少し行くと、簡単な椅子と机が並べられた休憩所のようなモノが出来ていた。そこは、元々駐車場か何かのようで、アーケードからはずれた所に夜空が見えていて、周りの壁に張り付くように、テントが並んでいた。その下にも、金魚すくいや、綿菓子や、リンゴ飴を売っていて、人が群がっていた。

僕らはそのテーブルの隅に、何とか席を確保して、座った。僕と明日菜ちゃんはそこでたこ焼きを食べることにした。すると妹は、スッと席を立って、テントの方へ向かった。空いたスペースは、あっという間に小学生ぐらいの子供が占領した。その手には、金魚の泳ぐビニールが提げられていた。

とりあえず、たこ焼きをつまみながら、僕は妹の背中を捜したけれど、あれほど目立ったセーラー服が見えなくなっていた。このスペースから出たのかもしれない。同じように、明日菜ちゃんも目で追っていて、見えなくなりましたね、と言った後、何事もなかったように、たこ焼きを口に運んだ。

僕はケータイを取り出し時計を見た。妹と一緒にスマホにしたけれど、未だに扱いに慣れない。ただ、僕の隣に並んだ明日菜ちゃんは、その画面をのぞき込んで、声を上げた。

「それがモモちゃんですか?」

鳴門で撮ったモモちゃんの画像が壁紙になっていた。撮影した僕が夕日を背にしているせいで、モモちゃんは目を細めていた。笑っている画像でもなく、どこかに緊張の残る表情をしている。でも、今のところ僕が持っているモモちゃんの画像は、これぐらいしかない。

一号の結婚、およびユキちゃんの妊娠を聞いてすぐに、この壁紙に変えた。ケータイからスマホに変える時に、パソコンのソフトを改めて買ったりしてわざわざ、ユキちゃんとのツーショットの画像を移し替えたのに、それは壁紙になることもなく、メモリーカードに刻まれて終わっている。ただ、削除する勇気もない。

「トモくんの写真は?」

と僕が返すと、ああ、と言って明日菜ちゃんはケータイの画面を僕に向けた。明日菜ちゃんは満面の笑顔で写っている横で、むすっとした表情のトモくんが並んでいた。照れているのか、単純に何かおもしろくないことがあるのか、二人のちぐはぐな表情が、微笑ましかった。

いつ撮ったの?と聞くと、去年の夏、と応えた。

「思えば、あの頃がピークだったかなぁ」

そう言って、その詳細に身を乗り出した僕を遮るように、もう一個、たこ焼きを放り込む。

 

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