「私も知ってます」

明日菜ちゃんが堪えきれなくなったように、声を出した。

「私も、妹さんのこと知ってます」

そう言った明日菜ちゃんの頭を、妹は手で乱暴に撫でた。綺麗に後ろに撫でつけた髪をかき乱す。

「ありがとう。嬉しいね」

と言っておく、と妹は付け加えた。

「でも、無理はしない方がいいよ」

そういった向こうで、妹を呼ぶ声がした。僕ら三人は反射的に、声の方を見た。そこには自転車を押した隣の田圃のおばさんが農作業用の恰好で立っていた。

「アラこんちは」

と言う口調に、妹は全く普段と変化はない。誰彼無く、分け隔て無く、妹はがさつで居続けている。

妹は縁台から立ち上がると、おばさんの方へ向かう。おばさんは自転車の前カゴから、瓶のようなものを取り出して、これが手に入ったから、とか言って妹になにやら説明をし始めた。どうやら、菜園のための肥料みたいなものらしいが、僕にはよくわからなかった。

 

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