次の日、妹は寝間着のまま、朝からバタンバタンとやり出した。いつも起きる時間よりもずっと早くから、その音は聞こえ、朝の用意を済ませて玄関を出ようとして、庭を見たら、七夕の布団や、洋服ダンスや、玩具の箱や、そのほか七夕が使っていたもの並べていた。

僕はどうも気になって、その日は残業もせずに、早いうちに帰った。すると、庭には何かを燃やした跡があった。妹はその灰を、スコップで掬っては、菜園に満遍なく拡げていた。拡げては土をかけ、また灰をまく。まるでそれは、埋葬のように見えた。

その次の日、家に帰ると駐車場に軽トラックが停まっていた。いつもは妹が乗っていたワゴンRが停めてある所に、いかにも中古のちっちゃなタイヤの、ずんぐりとした軽トラックがあった。車検の台車か、どこかでぶつけたか、と思って僕は妹に尋ねた。

すると、妹はこともなげに、売った、と言った。さすがに僕は、なんで?と聞き返したが、妹はその時、ただ、ニヤリと笑った。下取りも二束三文で、すぐに乗れるのが軽トラだけだったらしい。ただ、思い返してみると、妹の笑顔を見たのは、七夕がいた時以来だった。それはほのかに嬉しかったが、どうも素直には喜べなかった。

それからすぐに、食品会社のパートを再開した。その軽トラに乗って、朝早くから仕出しの調理をするために、家を出て、夕方近くに戻ってくる。家事を再開して、休みの日には掃除したり洗濯したり、庭の手入れをしたりした。軽トラの荷台には、次第に菜園の道具が乗せられ、どんどん土に汚れていった。

それらが一段落して、妹は何か、取り憑いたのか、あるいはこぼれ落ちたのか。ずいぶんと変わっていった。

それは一言で言えば、がさつ、になったのだ。特に、言葉遣いがひどく荒っぽくなった。だぜ、とか、だろ?とかいう言葉を使う妹を見るのは初めてだった。

 

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