明日菜ちゃんの残りを僕が受け取った頃には、妹はまた七輪の前でパタパタやり始めたが、その傍らにはプラスチックのビーカーのような容器に入ったしょうゆが用意され、刷毛の変わりのレンゲでトウモロコシに満遍なくかけていた。七輪の上の網に乗せると、ジュッ、と盛大な音がして、独特の焦げた匂いがした。勝手口から、またブチクロが興味津々の目でこちらを見ていた。

さっきよりは旺盛な煙が立ち上って、妹はうちわで自分の目の前を扇ぐ。アガー、というような不思議な言葉を放って、初めての試みに苦戦していた。

それを明日菜ちゃんは、本当におもしろそうに見ていた。飽きないですね、と独り言のように言う。

「昔から、妹さんってああなんですか?」

視線を向けたまま、明日菜ちゃんは僕に訊いた。どうかな、と僕は曖昧に応えた。

「でも、もっとちゃんとオシャレして、素敵な服着ればもっと美人が映えると思うのにな。きっとそうすれば、モテるでしょ?」

ア、今でもモテているのかな、と訂正した。

「でも、ちょっともったいない、と思う」

 

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