ブチクロにキャットフードをやり終えた妹は、またトウモロコシを囓りながら戻ってきた。

「良いこと云うね、明日菜ちゃん」

しっかり聞こえていたらしい。

「ご褒美にもう一本焼いてやろう」

途端に明日菜ちゃんの表情が困惑に変わる。ブチクロに上げても、まだ半分、トウモロコシは残っていた。

「いや、もうお腹いっぱいで」

「遠慮するな」

そう言い残してまた、妹は菜園の中に入って、太いのを一本もぎ取ってきた。

「今度はお醤油をまぶすか、小豆島で買ってきたイイ奴がある」

皮をむきながら、妹は笑いながらまた台所に向かった。きっと、もう一本焼ける喜びに、妹は昂揚しているに違いない。断る隙を与えられない明日菜ちゃんは、当惑したまま、とりあえず、最初の残りを片づけに、縁台に座り直した。

代わりに僕は、綺麗に後も残さず食べ終えた芯を、皿に載せる。

「俺は太ったから、まだまだ入るぜ。明日菜ちゃんの分も、な」

僕がそういうと、明日菜ちゃんはホッとしたように、目を伏せて肩から力を抜いた。そしてまたゆっくり、少しずつ、トウモロコシを平らげにかかった。

 

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