それが夏の初めで、僕らは毎日メールを交わして、そして時々、逢った。彼女の病院は、整形外科だけど、入院も受け付けている、近所ではかなり大きな病院なので、ローテーションで夜勤がある。その合間に、食事をしたり、時々家に呼んだりしている。

その時に、妹にも紹介しておいた。

モモちゃんはいつも、僕の小指の心配をしてくれて、病院でも、ホテルでも、僕の家でも消毒をして、絆創膏を貼り、包帯を巻いてくれた。小指の先、とはいってもそこを湯につけないで風呂にはいるのはけっこう一苦労だ。それが、モモちゃんの御陰で、ずいぶんと楽になった。

結局、小指の先を切り取ることになって、僕の一部分が不完全なまま、一生の付き合いになることが決まった時に、そのことがもたらすネガティブな感情が一段落すると、モモちゃんのことを思い出して、縁とは不思議なモノだな、と僕は思った。

きっと、僕が自分の小指で、一番困難を感じるのは、女の子と付き合う時だろう。出会った最初に、まず説明を用意しないといけない。そういう手間が居る。必要な手間だけど、めんどくさいと言えば、めんどくさい。

それをきっと、モモちゃんの場合は、すっ飛ばした所で逢える。そういう言い方がどうかわからないが、ある意味楽が出来るのだ。都合がいいといえば、都合のいい相手なのだと思う。

 

戻る 次へ