出来たぞ、と妹が戻ってくる。一本丸ごと、トングに挟んで持ってくる。湯気、というか煙が立ち上っていて、香ばしい薫りが鼻を突いた。皿、といって僕はあわてて台所に戻る。

戻ると、妹がトングに挟んだまま、明日菜ちゃんの口元にトウモロコシを持っていっている所だった。そのまま、明日菜ちゃんは口を寄せ、食べにくそうにかじっていた。手で支えようとするが、炙りたてはまだ触れることが適わない。妹も、手元で調節するが、上手くはいかなかった。

それを皿に置き、二本目に取りかかろうと、妹は一度きびすを返して、そのまま一回転して再びこちらを向いた。

「でもな、その怪我の御陰で彼女が出来たんだから、この夏はバラ色だったんだよ」

そういって、ガハハ、と笑って七輪に戻った。

 

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