「ところで、アイスかなんか無いのか?デザートに」

そう言いつつ、僕は目の前のうどんの亡骸を片づけ始めた。もう二度と見たくない、うどんもどきだった。汁をガラスのボールに空け、小鉢を重ねる。妹も、明日菜ちゃんもめいめいに重ねる。

「これが、とっておきのおもてなしのつもりだったんだけどな」

妹は、食卓を立ち、シンクへ食器を運びながら、そう呟いた。

「私は充分ですよ、これで」

おもてなし、の言葉に明日菜ちゃんは恐縮したのかもしれない。僕は冗談めかして、それをうち消す。

「でも、もっとまともなモノの方が好かったよ」

僕が布巾で、テーブルの上を拭き始めると、明日菜ちゃんはシンクの妹の隣に立った。手伝います、と言うと、イイよ、と返しながら妹は蛇口を捻った。

「うちには無敵の食器洗浄機があるんだぜ」

と得意そうに、シンクの隅の、箱形のマシンにあごをしゃくって見せた。妹の誕生日に、何故か僕が買わされた。夏のボーナス時期に産まれた妹は、パートなので申し訳程度の賞与しか出ないので、僕が恰好の餌食となる。食事を作ってもらっているとか、家事を任せている以上、僕も無碍には出来なかった。

ああ、そうだ、と妹は声を上げて、ちょっと背伸びをして、庭の方をのぞき込んだ。台所の隅には、勝手口があって、今は風を通すために重しを挟んで半開きにしていた。その隙間から、庭が見える。

「トウモロコシ、喰うか?」

明日菜ちゃんが、あわてて、お腹いっぱいです、と言ったが、もう妹は、自分のプランに夢中になっていた。

「まだまだ、大丈夫だろ・・・食え。」

そう独り言を言いながら、妹は一人でスタスタ、勝手口へ向かって歩いていった。

 

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