僕と妹は、オヤジに連れられて、祖父の傍らに座っていた。隣には、タッチャンと、彼の父親も並んで座っていた。枕元には、医師が付きっきりで様子を見ていた。僕の親父と、タッチャンの父親は、僕らの頭の上で顔を寄せ合い、ひそひそと何事かを喋っては、沈鬱な表情を崩さないまま、頷きあったりしていた。

そのうち、祖父は何か唸るような、声にならない声を上げはじめた。長男のオヤジが、耳を近づけて聞き取ろうとするけれど、わからない、というように首を振った。医師も、聴診器を当ててみたりするが、もうほとんど意識がない、とばかりに首を振った。

そういうやりとりをしているうちに、皆が集まってきた。押されるように、僕やタッチャンは、祖父の布団のすぐ脇に座ることになっていた。もう布団の周囲は、親父の兄弟姉妹がずらりと顔を揃え、その後ろに重なるように人が並んでいる。もう何処にも動けない状態だった。しきりに医師が、脈を取り、祖父はただ、口を動かすだけで声は出なかった。

そうして静かに、息を引き取ると思われた、その刹那だった。

 

戻る 次へ