それが、こんなに身近な所に繋がっているとは、と僕は奇妙な感覚に囚われていた。

「どう思います?」

そういってから、明日菜ちゃんは僕を見て、続けて妹の顔を窺った。

しばし、風の吹き抜ける音以外、沈黙が食卓を支配した。

「他人の家族のことだからねぇ」

身も蓋もない、当たり障り無い答えを、妹はこぼした。だけど、正直、それ以上何かを言え、といってもすぐには見つからない。本当はもっとずっとデリケートな話なんだろうけれど、何故か、テレビに出ている、という特殊事情が重なると、ポンッ、と突き放してしまえる軽さが伴った。

あんな調子のいい世界と、現実は違うよ、とでも言いたげな、勝手な先入観だった。ただ、妹が、そこら辺の線引きをはっきりと付けたがるのは、僕には理解できた。妹自身、離婚という現実の厳しさに痛い目にあった経験を持つ。

「明日菜ちゃんの場合は、全くの他人でもない、ってことだろ?」

それがきっと、東京に行くことと関係があるのだろう。

「嫁入り五秒前、みたいな話でもされたか?」

苦笑いを浮かべて、明日菜ちゃんは首を少しだけ傾げた。吹き抜ける風が、彼女の肩に掛かる後れ毛をふわふわと揺らしている。彼女の項は、ずいぶんと白くきめの細かい肌をしている。学校の制服は何故かどれも、首筋だけは綺麗に強調する。清潔さの象徴、なのだろうか?

いずれにしろ、僕らが何かコメントするには、情報がまだ少なすぎるし、それに対する責任を持つ気もなかった。自然、またしても沈黙の虜となる。

それを破ったのは、またしても妹だった。

 

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