妹は普段、同じ町内の食品工場に勤めている。待遇はパートだが、実際はもう一人の60を過ぎたおばさんと二人で、総菜を作るラインの一部門を任されている。そこの従業員は、ほとんどが外国人で、その烏合の衆をかなり強引な方法でまとめ上げているという。

打ち方は、そこのおばさんに訊いた通りにやった、と白状した。後、ネットで少し調べてアレンジを加えた、が、それがどんな手だったのかは言わなかった。

それが不味かったのか、単純にビギナーだから失敗したのか、それはわからないが、できあがった物は自他共に認める、出来損ないのうどんだった。

「悪いな」

明日菜ちゃんの方を向いて、妹はそういった。イエ、と明日菜ちゃんは恐縮する。ただ、口は正直だ。それ以上うどんを手にしようとはしない。

「腹減ってる?」

そう重ねて尋ねると、慌てて明日菜ちゃんは首を振った。

「お昼はちゃんと食べてきましたから」

そうか、と妹は納得するが、なんとなく釈然とはしない表情で、またまずいうどんを見つける。妹としては、昼下がりにおやつ代わりのおもてなし、のつもりが、全く逆に気を遣わせてしまったのだ。それも含めて大失敗、と言わざるを得ないだろう。

「これ、今度叔父さんが来たら、出してやれよ。喜ぶぜ」

僕はそう妹に言う。妹は僕の方を見て、ニヤリ、と笑った。

 

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