でももう、あれ以上の伝説は作れないから、今度は音で勝負。

それがオリジナル、といって作ったのが、今練習している曲だった。ステージは他にも、僕がいくつかプレゼントした曲をやるらしく、最初にセッションしたインストも、ラインナップには入っている。

曲全体のアレンジは済ませたのだけど、肝心のソロのパートが、まだなかなか決まらなかった。彼女曰く、ありきたり、で満足できないそうで、思いついたフレーズを片っ端から試している最中だ。思いついてもしっくり行かなかったり、どうしても完全には弾きこなせなかったりと、なかなか苦労している。

僕はそこに、アドバイスをするために、見ているわけだけど、もうすでに、彼女のテクニックは僕をすっかり凌駕していて、せいぜいこんなフレーズはどう?と漠然としたアイデアを言葉にして出すぐらいだ。指を怪我している今、その言葉も、ほとんど口から出てくるだけの擬音ともイメージとも着かない摩訶不思議な表現に終始して、それもまた彼女を混乱させている一因かもしれない。

 

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