その尻を、彼女は回し蹴りして、蹴散らしてからセンターに立ったのだ。

ボーカルはもんどり打ってステージから転げ落ちた。それを見下ろすように、センターに置かれたモニタースピーカに足を乗せると、明日菜二号を抱きかかえるようにして弾きまくった。ボーカルはステージの下から唖然としてその姿を見上げていた。

ソロはエンディングに向かってなだれ込んだが、片手でネックを握ってトリルしながら、ボーカルマイクをとって、まだまだ終われないよ、と叫んで、ステージ袖に投げ捨てた。ボコッ、と酷い音がして、また彼女はソロを弾き始めた。

予定にはないめちゃくちゃな早弾きの羅列。苦笑しながら、他のメンバーは、それに着いていった。そこら辺は不思議と小馴れていた。もしかしたら、彼女がこんな風に切れたのは、今回が初めてではないのかもしれない。

ただ、演奏はまとまるはずもなく、彼女も限界をとうに超えていて、結局強引に断ち切るような形で最後の曲は終わった。おもしろかったが、結局それだけだった。

メンバーをはじめ、何人かの友人、そしてステージを見ていたわりと理解のある先生にも、結構な小言を言われたらしいが、彼女自身は、反省するフリをして、切れた自分をちゃんと肯定的に受け止めていた。

 

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