彼女は、自分の通う高校で、最高のメンバーをあちこちから引き抜いて最高のバンドを自称して活動している。最高でなければ、活動する意味がない、と豪語もしている。

去年の文化祭で、そのステージを見たけれど、確かにテクニックは申し分ないけれど、やはり高校生のバンドだった。演奏をそつなくこなして、ほとんど間違えない代わりに、それ以上の何かが曖昧だった。高校の中では声援を浴びていたが、それはあくまでも狭いテリトリーの中での瞬間の刺激に過ぎない。音楽の世界はまだまだ広く、深い。

彼女もそのことを薄々感じていたのか、演奏しているその表情は余り冴えなかった。ギターを持ってステージに立つ彼女は、それだけで注目の的で、彼女を目当てに体育館に集まっている観客も少なくなかった。その前で、彼女は終始浮かない顔をして、何とか笑おうとしても、頬が引きつるばかりだった。

最初は、緊張しているのだろう、と見ていたけれど、そうではないのが、次第にその態度に表れ始めた。そのうちに目に見えてイライラし始めて彼女は、ついに最後の曲で、爆発した。

彼女のたっての希望で、最後の曲は、ガンズ・バージョンの悪魔を憐れむ歌、をチョイスしていた。エンディングで、長々とギターのソロがある。それを彼女は完コピして挑んだのだ。

いよいよソロ、となって、それまでステージの端でギターを弾いていた彼女が、センターに歩み出た。そこで、下手ではないが、ただ騒がしいだけのボーカルが、クネクネと変な動きで客を煽っていた。

 

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