彼女が躓いているのは、彼女が書いた初めてのオリジナルだった。

セッションの後のお茶会で、高校最後の文化祭で、オリジナルをやる、という宣言をした。いつもセッションの後には、同じ店に集まって反省会という名の無駄話をする。セッションに参加した者も、しなかった者も、三々五々に集まって来て、日曜の夕方をなんとなく喋って過ごすのだ。

その中で、彼女はアイドル的存在で、もうすっかり人生を折り返した面々が、制服姿の彼女をチヤホヤするのだ。おそらく音楽、というもので繋がっていなければ、彼女だって嫌な顔をするのかもしれない、と時々思う。でも、彼女はけっこう、その集まりを楽しんでいた。

年齢は違うけれど、僕が高校生の時の自分のテリトリーからはみ出した頃を、なんとなく重ねて見ていた。案の定、興奮した彼女はオリジナルをやります、と盛大にブチ上げて、メンバーの拍手喝采を浴びたのだった。

 

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