ギターを弾くのに、右手の、しかも小指なんて必要ない、と思っていた。まぁ、ジェフ・ワトソンのエイト・フィンガー奏法は無理になったけれど、そもそもそんなトリッキーな技を駆使するほど、僕は上手くはない。

でも、意外に小指の先は、ギターのボディーに触れた。特にソロを弾く時、僕は無意識に、小指をボディーに付けて、右手のバランスを取っていた。自分ではブリッジに手の平を乗せているつもりだったけれど、そこから伸びる小指が、ちょうどイイ支点になっていたのだ。

だから、まだ指先がかろうじて包帯の中で繋がっている時に、ギターを手にとって、構えただけで稲妻のように痛みが走って驚いた。手の平全体がむくんでいて、びりびりと痛みが広がっていった。それに慣れるまで、しばらくかかった。

それ以外でも、小指の先、というのは思わぬところで活躍していた。デスクトップのマウスを動かす時にも、小指はちょうどイイ接地脚になっていた。小指を立ててマウスを動かすようにしたら、違和感が先に立って、スクロールすらままならなかった。

とにかく、こんなにも小指を意識したことはなかった。そしてきっと、包帯が取れると、もっと意識することになるのだろう。

何しろ、僕の小指の先が、無くなっているのだ。

 

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