彼女は、彼氏がギターを断念したことを、ひどく残念がっていたが、彼は元々いた場所で器用さを発揮していて、それを知っている彼女もしつこく説得はしなかった。ただ、新しいギターを選ぶ時には必ず、彼の意見を聞くのだ。

ただ、高校三年生の女の子に、そうそう新しいギターを買うチャンスが訪れるわけもなく、結局、今手にしているアリアの中古のギターが、その唯一の機会だった、というわけだ。

それでも、彼女はそのギターを自分のメインに据えて、愛用している。溺愛、といっても良いぐらいだ。彼女はギターに「二号」という名前を付けて、四六時中触っている。なんの二号か尋ねると、そもそもは、自分の名前を付けて「明日菜二号」だったらしい。それがつづまっての「二号」らしい。

ちなみに僕と一緒に路上で唄っている奴も、みんなから「一号」と呼ばれていて、そのそもそものきっかけは僕も知らないけれど、それは全く名前とは関係ないのだけど、彼女はどこかで、その「一号」も意識しているのかもしれない。

 

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