ああ、この数日、本当にすることがなかったはずなのに、結局ガンダムのDVDと焦げたクッキーと三冊の文庫本だけだった。後一日と少しあるけれど、なにかを出来そうにもない。そういうモノなのかなぁ、と思うけれど、ひどくもったいない気がした。

この騒動がなければ、今はいったい何をしていただろうか、と思う。あのラジオ出演が決まっていたのと、舞台があって、と数えてみたけれど、それとガンダムのDVDと文庫本三冊にクッキーを重ねて天秤にかけてみても、容易には針は一点で止まろうとはしなかった。

騒動はなければないに越したことはないだろうけど、あったとしても、もっと他にやり様はあったはずだと思うと、不意に訪れた空白の時間でも、もったいないと思う。ゲンキンなものだな、と自分で自分に苦笑した。

そのドキュメンタリーが終わると、主は、私の顔をじっと見て、そうだ、と立ち上がった。

「とりあえず、これからのことも決まったんだから、いい所連れて行ってやるよ」

いい所?と聞き返したが、私の言葉など耳に入らなかったように、スタスタと先に行ってしまう。

主は奥さんとなにか話して、奥さんはキッチンの食器棚の引き出しからなにか取り出して、主に渡した。そうしてからやっと、主は私の名前を呼んで、手招きした。

 

前へ

次へ