東京でアイドルをプロデュースする、というプロジェクトが成功した後、スポンサーのショッピング・モールは、大都市を中心に支店の中に次々と同じような劇場を造っていった。それぞれに専属のグループを配置して、一応はライバルのような、一応仲間のような、曖昧な関係を保ったまま、人数だけ増えていった。

その内の福岡にある劇場に、私は移籍、ということになった。正式発表は週明けの月曜日で、その為のスケジュール調整が終わったので、私の所に連絡が入った。

その電話は、最初奥さんが取った。主に一度代わって、簡単に会話した後、私が話を聞いた。電話をかけてきたのは、劇場の総合プロデューサー本人で、私はその通達を、一方的に告げられた。まぁ、そういうことだから、という言葉以上に、なにもなく電話は終わった。

支店に島流しだって、シマコーサクみたいと私がいうと、主はふんっ、と鼻で笑った。そして、良かったじゃないか、と云った。

「歌もダンスも辞めなくて済む」

それはそうだけど、とつい、口をとがらす。すると、主は、呆れたように肩をすくめた。

「シマコーサクだって、関西だ海外だって、支店回って最後はトップに上り詰めたんだぞ」

それとも、と云って眉間に皺を寄せた。主は、そういう表情になると、途端に怖い顔になる。本人はそんなつもりはないんだろうけれど、そのまま睨まれると凄味が効いている。

「やっぱり東京がいいのか?」

そう問われて、即答は出来なかった。そんなに東京を意識したことはない。だけど、東京でないと一番にはなれない、とは思っていた。

「その為に、アイドルやってるんだよ」

表情が崩れて、主はまた鼻で笑う。今はもうそんな時代じゃない気がするけどな、と主はどこか不満そうだ。

 

前へ

次へ