私はスマートフォンの画面を見つめながら、ゴロンとソファに横になった。白い天井に照明器具が埋め込まれている。今は光が消えている。だけど、その光が恋しくなるぐらいに、外からの日差しも心許なかった。

私の斜め前の一人がけのソファで、主は新聞を置き、テレビに見入っていた。いつの間にかゴルフの中継にチャンネルが変わっている。主は結構熱中してみている。スマートフォン越しに、その表情を見ていると結構おもしろかった。

時々、オッ、とか唸る。普通のおじさんなんだな、と思う。同じ世界の人間とは思えない。打ち解けてもやっぱり、冴えない印象は拭えない。

私がスマートフォンを、放り出すように机に置くと、その音で主はやっとテレビから目を離した。なにか見たいものあるか?と申し訳程度に訊く。

どうしようかと迷った。特に見たい物があるわけではないが、ゴルフを見るつもりはない。だけど、ゴルフを見ている主をそのままにしているのは癪だった。

「どこか連れて行ってよ」

「それは無理だ」

即答だった。なんで?と理由はわかっていて、こちらもすぐに反応する。

「とりあえず、俺ん家で隠れている、というのが事務所の命令だ。俺はそれに従うしかない。おまえはずっとこの部屋で、俺の監視下で大人しくしていてくれ」

退屈だとは思うけど、と小さな声で付け足したけれど、聞こえないフリをした。私はふて腐れて、そっぽを向いた。

 

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