顛末、という言葉がおっとり響くほど、反響は素早く、苛烈だった。

その雑誌の記事が出ることは、直前になって事務所に連絡が入り、止めることもままならないまま、まずネットを駆けめぐり、翌朝には店頭に並んで誰の目にも触れることになった。

その日の舞台は私だけキャンセルになった。自宅待機を命じられて、スタッフが数人、私の部屋にやってきた。その時にはもう、部屋の周りに何人かの取材の人間の姿が見え隠れしていた。

私の部屋のファックスが、その記事のコピーを受信した。コピーは事務所から送られたもので、連絡を受けた私が望んだのだ。

忘れたはずの彼と、私はその記事で再会した。彼の顔は出ていなかったかわりに、私が送ったメールや写真が公開されていた。彼だけに見せた私の姿が、そこにはあった。

正直いって、呆れた。

金属みたいに堅そうに思っていたつるつる光る球の表面に、そっと触れてみると、瞬く間に割れてしまったような感じで、私の中にわだかまっていた恋愛の経験が、枯れた。かさかさと乾いた音を発てて、割れた破片がどこかへ飛んでいって見えなくなった。

悲しいとか、そういう感情は全くなく、ただ呆れた。

それ以上、何も思わなかった。逆に慌て始めた周囲を、私はぼんやりと見つめるだけだった。そんなに騒ぎ立てるほどのことではない、と私は半分、軽蔑した眼差しを送っていた。だけど、自分のことをわかっていなかったのは自分の方で、冷静に状況判断をしていたのは、間違いなく周囲の方だった。

私は自分を過小評価していた。私ごときの恋愛の過去など、誰も興味もないと思っていたのが、全くの間違いだった。慌てて駆けつけたスタッフの顔を見てクスクス笑っていたのだけど、話を聞くウチに、私は私自身ではなく、偉大な看板を背負った一人だということに気づかされた。

そのブランド・ネームで私は輝き、その閃光に私一人が影を落とすことは許されなかったのだ。

その日一日、事務所は大騒ぎで、グループをプロデュースしている事務所も大騒ぎで、何度も連絡が行き交い、善後策が検討された。その間、自分の部屋に閉じこめられて、夜になってやっと外に出た。その日一日話し合った結果は、マンションの裏口からこっそり抜け出し、そこに用意された車に乗って、東京を出る、ことだった。

 

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