それは「コンタクト」という少し古い映画で、宇宙人からの電波を受信した科学者が主人公の物語だ。途中で思いきり誤解した日本の風景があって、それも含めて怖がる要素の全くない映画のはずだけど、あるシーンが頭から離れなくなった。

それは、ジョディー・フォスター演じる科学者がポッドに乗って、他の宇宙に行って、魂のようなモノとふれあうシーンだ。父親の姿に変装して現れる別の宇宙の生命体と、主人公は会話する。

私が夢に出てくるのは、その場所、だった。真っ白な渚を、深い青色の海からうち寄せ続ける波が洗っている。頭の上には空、というよりも宇宙の姿が広がっている。極彩色でだけど全体に暗っぽい色相に近寄っていて、雲なのか、ガスの光なのか、それぞれに奇妙な形で絡み合って、空全体を覆っているのだ。そこを幾筋もの流れ星が走っていく。

見ようによっては、美しい幻想的な風景だけど、その景色が現れると、私はとても息苦しさを感じるのだ。この世に似せた、この世のモノではない風景。とても綺麗なリアルな作り物の世界。映画だからそう感じるのか、そう感じるように映画がし向けているのか。

いずれにしろ、それは私に、死の世界を連想させる。

例えば、中学生の頃、学校の授業でバレーをしていて、転んだ弾みで鉄柱に頭をぶつけて失神したことがある。その時のことはほとんど覚えていないのだけど、一瞬瞼の裏に走った光の粒が、まさにその映画のシーンの色合いにそっくりだったのだ。

そっくりだということは後になって気がついたのだけど、いつの間にかその極彩色の渚のシーンは、私の胸に刻まれて、悪夢のアイコンとなった。その風景が出てくると、息苦しくなる、というやっかいな仕組みが、身体に産まれたらしい。

もっぱら最近見る怖い夢は、その風景が多くて、飛行機はもう見なくなった。

 

前へ

次へ