私が見る怖い夢は二つある。

小さい頃からずっと見ていたのは、飛行機が私の家の近くで落ちる夢。飛行機は大きなジェット機の時もあれば、UFOのような発行物体の時もある。決まって曇り空で、私の住んでいた家の上を低空飛行していって、住宅街の向こうの方へ消えたかと思うと、火柱が上がる。音もなく火柱だけが見えて、私は墜落事故が起きたんだと思う。

すると、その火は徐々に大きくなって、住宅街の向こうから、だんだん自分の家に迫ってくるのだ。その様子をただ、ドキドキしながら見ている。心拍数が上がってくるのがわかって、その火に包まれる想像をする。想像すると、よけいに鼓動が早くなっていく。

そして、目が覚める。実際に胸がドキドキしていて、その夢自体が怖いのではなく、心拍数が上がって、興奮している自分が怖いのだ。異常な興奮で、血管が破裂するとか、そういう身体の悲鳴が頂点に達して、死んでしまうんじゃないか、という怖さなのだ。

ただ、その夢はいつの間にかあまり見なくなった。

というのも、「ノウイング」という映画で、夢でよく見た映像と同じシーンが出てきたからだ。主人公のニコラス・ケイジの運転する車が渋滞に巻き込まれて、その上空を斜めになったジャンボジェットが飛んできて、そのまま墜落する。そのシーンが、いつも見る夢によく似ていた。飛行機の傾き具合とか、炎の上がる様子とか、初めて見る映画なのに、夢と同じ風景だったのに驚いた。

ただ、そうやって自分の悪夢を、映画のワン・シーンに押し込めることに成功したのかもしれない。それ以来、飛行機が墜落する夢は見なくなった。

かわりにうなされて起きる悪夢のトップに躍り出たのは、またしても映画のワン・シーンと同じだった。それは、その映画を見てから、見るようになった夢だった。

 

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