怖い夢を見た。

目が覚めると、全身に汗をかいていた。横になっていたソファが濡れてないのか気になった。ちゃんとベッドを用意してくれたのに、意地を張ってソファで寝ることにしたから、この上そのソファを汚したとあっては申し訳が立たない、と思った。

案の定、私の背中に敷き詰めた薄いクッションが、じっとりと重くなっていた。きっとその不愉快さで目が覚めたのだろうと思う。私は、その不愉快さを引きずりながら、上半身を起こした。

部屋の中は真っ暗で、所々小さな赤や青の光が見える以外は、すべて沈黙していた。見ていたはずのDVDも終わっていて、ちゃんとテレビの電源も切られていた。

そして、私の膝には薄いタオルケットが掛かったままだった。エアコンの音はしなかったので、点いているのかどうかはわからなかったけれど、部屋の中はほんのわずか、むっとした。気温が上がっている上に、どことなく湿気が漂っている。自分が汗をかいてそう感じるのか、実際外で雨でも降っているのか、よくわからなかったけれど、不快さがその湿気のせいであることは、間違いなかった。

そういえば、数日前に梅雨入りの発表があったな、と思いだした。

汗なんてかいたのは、きっとこのタオルケットのせいだろうな、とほんのわずかに悪態をついて、手で払いのけた。音もなく、タオルケットは床に落ちる。落ちたのを見届けて、自分がブラジャーを着けたままだということに気がついた。いつの間にか寝ていたので仕方がないとはいえ、胸を締め付けたままでいるのは、いい結果を生まない。

私は背中に腕を回して、ブラのホックを外した。薄い長袖のシャツの中で、汗を吸った下着がただの布になった。

怖い夢の原因が、胸を締め付けるブラのせいか、湿気にやられた汗のせいかどうかはわからないけれど、そういう目が覚めるような悪夢を見たのは、本当に久しぶりのような気がする。悪夢どころか、夢自体を見ることもなく、毎日の忙しさが私の背中を叩き続けている。夢を見るほどの睡眠、というものがあるのかどうかはわからないけど、そういう時間を今、過ごしているんだな、と思った。

 

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