一号が帰ってきた。顔がほころんでいる。

「テレビ、テレビ」

といって席に座った。

「オレの職場って、入所している人が集まる娯楽室みたいな部屋があって、そこには大画面のテレビがあるんだけど、そこだけ、中賛のケーブルテレビが引かれているんだよ。というか、ケーブルテレビの方から無償で、って感じで置かれているんだけど、そうそうそれそれ」

一号はひどく興奮している。

「有名人?」

「有名人っていうか、良く知らないけど、アナウンサーとかじゃないの?どこの局か知らないけど。ついこの間、坂出の金時にんじんの畑でリポートしていたのが、彼女だったよ、間違いない」

へえ、と気のない返事をした僕を、一号は一瞥しただけで、自分の発見に何度も頷いた。

「取材かな」

なんとなく、僕は思いついた事を言ってみた。

「そうかもね。でも高松は、でっかいアマチュアの元締めがいるから、俺達は蚊帳の外だよ」

躍起になる歳でもないしな、と僕は口に出さずに言ってみた。テレビに出るとか、大きなステージで演奏するとか、とにかく俺の話を聞けとかよりも、僕の最大の関心事はパンツが見えた事であり、それがなんとなく誘っているような妄想をかき立てる事の方が重要なんだと思った。だとしたら、僕は全く成長していない。

結局また僕は、スカートの上に失望を滴らすだけで終わるんだろうか。その繰り返しで、僕の人生は終わるのだろうか。

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