ただ、思いも寄らない事も時々は起こる。こちらに帰ってきてから二度目のつらい別れを済ませた帰り道、闇に紛れて眠るのに絶えられなくて、僕はフラフラとコンビニに立ち寄った。クルマを停めて、未だ逸る鼓動を押さえながら、半ばその衝動を乱暴な仕草で表現しながら、僕はコンビニの眩しいライトに癒されていた。

そこでぐるりと店内を一周して、ブックスタンドの前に立った。半ば自棄を起こしていた僕は堂々と、アダルト雑誌の一冊を手に取り、グラビアページをひろげた。

そこに、セシルカットの彼女がいた。

顔立ちは大人びていたが、目つきはあの時のまま、つぶらな猫の目のようだった。名前は当然変わっていたけれど、一目見て、彼女だと解った。彼女は惜しげもなく、一糸纏わぬ肢体を晒していた。

不意に、ああ彼女、こんなおっぱいしていたんだ、と思った。小ぶりだが、しっかりと存在の主張を感じる奇麗な乳房をしていた。ついに僕は生で見る事の出来なかったその造形を、ボクは今になってしっかり見届けている。

なんだか可笑しくなって、僕はつい声を出して笑ってしまった。そのまま、レジに行きホットコーヒーと一緒に買って帰った。

何があったのだろうか、とかそういう事を考えるよりも、僕は彼女がずっと僕よりも多くの欲望の担い手になっている、受け口になっているその存在感に、ただただ感嘆した。なんて僕はちっちゃいんだろうな、と思って、先ほどまでの殺伐とした心持ちを笑い飛ばす事に成功した。

そういえば、それからだ。ちゃんと女の子と付き合わなくなったのは。そういうと、自発的に付き合わないみたいだが、やっと僕の中で欲望と、恋愛が分離したのかもしれない。そうすると、僕には欲望しか残って無くて、それは例えばお金さえあれば簡単に処理出来た。恋愛に向かう意欲は、欲望が片づくとひどく小さく残っている程度だったのだ。

自分でもひどい男だと思う。そして、そういう奴こそ、嘘を吐く事は許されないんだろうな、と思う。恋愛を知るまで、勉強してきなさい、と誰かにいわれているような気がした。

 

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