思えば、それがケンカのピークで、それっきりユキちゃんが飛び出す形のケンカは聞かなくなった。ここ一年ほどそれは続いていて、目に見えて二人はケンカ自体をしなくなった。

だからといって、少なくとも一号は変わっているようには見えない。要領が良くなったのだろうけれど、さっきウエイトレスに見せたような視線は相変わらずで、そういう意味では撒き餌は常にバラ撒いていて、引っかかってきた魚に容赦はない。それは傲りとも取れるけれど、喰い付かなければ喰い付かないで、別にイイやと飄々としている。ただ、未だ、甘いマスクのご威光は翳りを見せていない。

とすると、きっとユキちゃんなんだろうな、と思う。二人の仲を繋ぎ止めているのは、ユキちゃんに寄る所が大きいのだろうと思う。

それでも時々は、見えない所での暗闘は繰り返されているらしく、それに関しては苦笑混じりのエピソードに彩られている。中でも僕らの周囲の話題をさらったのは、ユキちゃんのあるバイト先にテレビ局の取材が来た時だ。

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