バーゲンのお知らせが主たる目的で、スポンサーがどうのこうの、というのが裏ではあるのだろうけれど、表向きは店先にいる美人さんを捜せ、みたいな企画だった。深夜のローカル枠でやっている番組で、やたらとテンションの高い年若い男性アナウンサーが今日は宇多津にやってきました、みたいな冒頭から始まった。

ユキちゃんは取材に来た、とは言っていたが、番組がいつから放送とか、どんな内容だとかは言わなかった。そもそも、その話は妹が新聞をひろげていて見つけた、番組宣伝のスペースにユキちゃんが写っているのを見つけたのが最初で、僕は慌ててユキちゃんに問い質したのだ。あまり乗り気じゃなさそうな感じだったのだけれど、僕はその番組を見てみた。

いかにも、という感じで店の奥にユキちゃんを見つけたアナウンサーは、相変わらずの甲高いテンションでインタビューを開始した。はにかみながら応えるユキちゃんの頬は、うっすらとピンク色に染まっていた。僕はその事に魅取れていた。

そのうち、彼氏はいるんですか?という話になり、彼女ははっきりとは応えなかったが、画面の外からいますよ、という店長らしき人の声がした。すると、アナウンサーのご機嫌は最高潮に達した。

アナウンサーは彼氏の話を鋭い調子を装って質問を重ね、ユキちゃんは照れたフリして答を曖昧にぼかしていた。くだらない番組だな、と思ったが、知っている顔が出ていると奇妙な感じがして、とりあえず僕は画面を見続けた。

最後に、では彼氏に何かメッセージをカメラに向かってどうぞ、とアナウンサーは言った。画面にユキちゃんの顔が一杯になり、僕は少しドキドキした。なんだかユキちゃんに見つめられているようで、身体が石にでもなったような錯覚を覚えた。僕はテレビの画面を見つめた。

ユキちゃんはじっとこちらを見ていた。一度、視線を外して、照れたように少しだけ頬をゆるめて笑うと、またこちらを向いた。そして、今度はにっこりと、満面の笑顔を浮かべた。笑いながら、ユキちゃんははっきりと、短く言った。

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