今日も今日とて、相も変わらず歌を歌っているその前で、観客の中の一人の女性が、僕の目の前に膝を立てて座り込んだ。舗装された道路にお尻は着けずに、膝を抱えるような格好でちょうど僕の目の前にしゃがんだのだ。僕の目には黒いストッキングに包まれた膝から下が見えていた。それを両腕に抱えるようにしているのだが、当然僕の興味はもっと下の方にあった。オイオイその格好では・・・とギターの弦をストロークしながら、意識はあらぬ向きに行ってしまっていた。

ただ、ジャズ・コーラスに腰掛けた僕の視線は、一番確認したい部分には届かなかった。コード進行を追いながら、僕はどうにかして確認する方法を模索した。考えている内に、曲が終わった。パラパラと拍手が沸き、目の前の女性もパチパチと手を叩く。曲の最中は閉じていた彼女は、目を見開き、うっすらと微笑みも浮かべる。

まったくの偶然だが、僕の指からティアドロップ型のハードのピックが転げて落ちた。僕は元から汗かきで、ピックが手に着かない。だから落とすことは良くあるのだが、いつもはガムテープを丸めてジャズ・コーラスの天板の端っこに貼っておき、その上にピックを並べておくのだ。今日もその準備は万全だったのだが、僕は瞬間閃いた。

ピックを拾うフリをして、覗けないか?

作戦はまんまと成功した。細い踝と踝の間から、白い色がストッキングに透けて見えていた。それから僕は、何度かピックを落とした。その度に、ピックを拾った。

いつも一度腰を据えたら動かない僕が、今日はバタバタと忙しくしていたのを、一号は訝しく思っていて、いつもミーティングに使っている坂出の浜街道沿いのファミレスに入って開口一番、その事を訊いたのだ。

そして件の告白となる。パンツが見えていたんだよね、と。

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