イイか、と念の押すように、主はずいぶんと鋭い視線で私を見据えた。笑顔だったけれど、あの人なつっこい瞳に、強さが隠っていた。

「それが一番、素直な生き方だ。年相応の無理は少しはした方がイイかもしれないけど、誰かの言いなりになって自分を殺すのだけは、なるべく辞めた方がいい。

それが、責任取ることでチャラになるなら、ずっと居心地イイ人生だと思わないか?」

「でもね、私はアイドルっていう偶像で、商売しているんだよ」

「それは仕事上のルールだろ?その向こうの、お前の一番やりたいことだよ。それに素直になれ、ってこと。例のピアノ弾きは、刑務所で丸裸にされて、玉の裏までさらけ出さされて、自分が一番やりたいことに気がついたって。それは女の子に囲まれて、ピアノを弾くことだったんだって。それ以外のことは、別にどうでも構わないんだってサ。」

俺にはそこまでの開き直りは無理だけどな、と云い加えた。

「まぁ、機会があれば、一度会わせてやるよ。スキャンダルにならない程度に」

と戯けて云って、主はまた高笑いし始めた。

今度は私は、膝に回し蹴りをお見舞いする。主は、身体に似合わず、軽い身のこなしで避けた。

 

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